white parabolic antenna beside brown concrete building

ウォッシュとは、ホワイトウォッシュから来ている言葉です。

では、ホワイトウォッシュとは何かというと

「うわべを飾る」「ごまかす」「隠す」という意味で使われる動詞。

Wikipedia 「ホワイトウォッシュ」

とあるように、簡単にいうと「ごまかし」、「やっているふり」のことになります。

例えば、SDGs をやっているふりは、「SDGs ウォッシュ」、環境に配慮しているふりは、「グリーンウォッシュ」、そして ESG をやっているふりは「ESG ウォッシュ」というように使われます。

情報化社会でウォッシュと対峙する

SDGs ウォッシュとは

SDGs ウォッシュとは、その名の通り、「SDGs をやっているふり」になります。

SDGs は、17 のゴールがとてもキャッチーであるため、細部ににある 169 のターゲットを無視して、私たち、当社は、SDGs に取り組んでいますと、17 のゴールだけを示す場合があります。

詳しくは、SDGs とは でも解説している通り、17 のゴールを達成するために、169 のターゲットという KPI が存在しているため、KPI 抜きにして、ゴールは語れないのですが、往々にして、17 のゴールだけにフォーカスしている企業、団体、個人は多く、このようなやっているふりは、「SDGs ウォッシュ」として、市場から評価がされないどころか、マイナス評価を受けることがあります。

グリーンウォッシュとは

グリーンウォッシュとは、環境に配慮しているふりになります。

例えば、日本国内では、「植林しています」と環境に配慮しているような活動をしていても、自然の恵みに溢れた日本では、植林よりも、プロによる「森の手入れ」が必要であり、植林だけして終わりという行動が、グリーンウォッシュとして見て取られる可能性が高いのです。

つまり、山全体、森全体を見渡せていないと。

もちろん、伐採が行き過ぎた山や森に植林をすることは、山や森の再生面では有益ではあります。

ただ、植林をして、山や森が再生するには、百年単位の継続的な山や森再生のプロによるメンテナンスが重要であり、植林をした企業や団体が、百年単位の継続的な事業展開をし、その後もプロによる世代を超えた山や森再生の依頼までできているのかが、ウォッシュと本気度の温度差になると思います。

「マイ箸」運動がありましたが、日本で流通している割り箸の多くは、山や森をメンテナンスするために伐採した間伐材が多く(国外から輸入品も含む)、「もったいない精神」では、割り箸の利用を避ける上での「マイ箸」は理解できますが、「マイ箸」を使うことで、間伐は止められません。

環境に配慮するのであれば、流通時の温室効果ガス削減に寄与すること、使い終わった割り箸をごみとして燃焼する際の温室効果ガス削減に寄与することなどが挙げられますが、殆どの場合、このような背景に至るまでの理論はされていませんでした。

「マイ箸」と使えば、自分で洗う行為は、少量ですが、毎日水で洗い、洗剤をつかい、汚水を下水道から流し、浄化された後、海に放出されるという側面もあります。

そして、ご承知の通り「マイ箸」のブームが終わると、今現在も「マイ箸」を使っている人は少なくなり、割り箸の利用頻度が高くなっています。

結果論として、割り箸も例えば買い物時のプラスチック製の買い物袋の辞退も、一定度は環境に貢献できますが、割り箸やプラスチック製の袋が全く流通しないかといえば、そうでもなく、一定のニーズがある以上は、お店側も仕入れをして用意しておかなければなりません。

政府も法案などを通じて、プラスチック製品に関する制限をかけていますが、国民の善意に任せている面もあり、長いスパンでの意識改革が必要です。

こうした環境についての大きな枠組みと細部に行き渡る配慮をしてこそ、グリーンを宣言できるわけであり、それ以外のやっているふりは、グリーンウォッシュとされてしまうのです。

ESG ウォッシュとは

ESGウォッシュとは、ESG 経営をしているふりになります。例えば、非財務情報の情報開示はしっかりしているけれども、書面上だけ整えただけという場合が多く、それが企業により実践されていないケースなどが該当します。

ESG の潮流が、パンデミックを契機に日本でも話題となり、ここ 1~2 年程度の間に、ESG に対する興味関心が増えてきています。

そして企業が ESG が流行っているのであるのなら、当社もやってみようと CSR の範囲で ESG 的なことをするというのが、「プア ESG ウォッシュ」という知識が乏しい状態でやっているふりという、とても市場から見れば冷ややかに見られてしまう行動です。

非財務情報の公開がしっかりしているけれども、事業そのものの見直しには至っていないのであれば、通常の「ESG ウォッシュ」となり、投資側も企業の本気度をみて、投資判断をするため、本気度がなければ、ESG 金融を取り込む以前に、投資家たちから投資対象として魅力的ではないと映ってしまうのです。

ESG とは、でも解説している通り、ESG は経営の中心部にあり、事業を通じて行うもので、事業外で行う CSR とは、全く異なるのです。

この CSR の呪縛が解けない企業や経営者、実務担当者は多く、CSR として、ESG を実行しているふりは、多く見られる問題でもあります。

また、ESG は事業を通じてという視点も、この事業は Eだ、この事業は S だ、当社のこの取組は G だと当てはめるだけでは、市場は簡単にその目論見を見抜き、市場から淘汰されるまでに至るサスティナビリティ上も大きな問題だといえます。

やはり ESG を確かに実行していく上では、しっかりとしたコンサルタントの支援を受けながら、市場から評価を受け、ESG 金融を取り込んでいく必要性があります。

ESG ウォッシュは、ウォッシュの中でも最も事業にインパクトを与えるため、慎重に取り組まなければなりません。

情報化社会が、ウォッシュを見抜く

5G まで進化した通信網、スマートフォンの普及、SNS の普及などにより、今までは声の小さかった一般市民でも、多くの情報を入手したり、または発信したりできる時代になりました。

小さな専門的な NGO/NPO や個人のボランティアのレベルでも、情報開示されたものを判断し、情報を SNS へ拡散することができます。そうした投稿がバズったり、炎上したりして、企業のウォッシュのダメージに拍車をかけてしまうことになります。

「日本企業、人権監視強化急ぐ 強制労働に高まる圧力―ウイグル問題」時事通信 2021年12月10日掲載

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021120901200&g=eco

この記事によると、米下院にて「新疆ウイグル自治区」からの輸入を差し止め、ユニクロの T シャツを輸入しない方針を打ち出しました。

これは、ESG のうち、S(社会)によくないのと、G(企業統治)に問題があり、ESG ウォッシュとまで行くかどうかは、ユニクロの運営元であるファーストリテイリングが、ESG を打ち出すかどうかにもなります。

また、もしファーストリテイリングが、SDGs について言及している場合には、新疆ウイグル自治区の人権問題を無視しており、SDGs 8, 10, 16 番目に違反していることになりえるため、せっかく取り組んだ SDGs はウォッシュであったと言われてしまい、最終的には非売運動にも結びついてしまいます。

これはあくまでも一例ですが、ESG の潮流がヨーロッパからであったように、アパレル業界のワールドトップクラスである H&M や ZARA は、早々に「新疆ウイグル自治区」から撤退し、自社ブランドを保ち、ESG や SDGs についての本気さを市場や消費者投資家に訴えることに成功しています。

ウォッシュは、危険性の高い行為ですので、一度、専門家の意見を取り入れるなどし、各種ウォッシュを廃絶することをおすすめします。