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ESG の現場から見た ESG の生業について複数回に分けて解説したいと思います。

第一回は、「プロが少ない」です。

ESG のプロが少ない理由とは

環境、社会、ガバナンスそれぞれのプロはいる

環境のプロ、社会のプロ、そしてガバナンスのプロはそれぞれ多くいます。

しかし、ESG においては、これらすべてをカバーするため、なかなか、3つの領域全てにおいてプロであることは少ないのです。

環境の専門家は、生物学者などを中心に環境に特化して研究をされているので、「経営」としての視点が欠けます。

社会は、男女共同参画問題、LGBTQ 問題、人権問題など、社会の中でもそれぞれ得意分野は異なります。これは環境にもいえ、森の専門家は、海の知識が疎いときもありますし、その逆も当然起こりえます。

ガバナンスは、監査法人などを中心にプロは存在しますが、これも環境や社会への知識が不足しているときがあります。

仮に、環境、社会、ガバナンスにそれぞれ知識を得ていても、今度は、経営の知識が必要となり、経営上、特に CFO レベルが目指す利益のあり方を理解し、その範囲で ESG を回していくレベルの人は、日本を見てもなかなかいません。

MBA ホルダーを中心に、経営のプロに近いレベルの経営の知識を持っていても、環境、社会、ガバナンスには弱いパターンも多く見られます。

そして、MBA の多くが利益の最大化を目指す学術を学びますが、実践面で物足りないことが多いのも、MBA ホルダーの数が増えても、年収がさほど上がらないという実態が浮き彫りになっています。

従って、ESG の根幹である環境、社会、ガバナンス、そして経営のプロはそれぞれいますが、すべてをカバーできている人は、業界内でも少ないのです。

また、ESG の非財務情報の公開となると、企業そのもののオペレーション(現場レベル)まで介入して、時には地べたを這いずり回り、そして現場から嫌われようが、徹底してオペレーションの舵取りをし、その責任をすべて被る覚悟があるかというと、一介のコンサルタントでは、なかなか難しいコントロールが求められます。

これは、経営ではなく、業務コンサルタントの領域でもあり、トップダウンした後の現場の手厚いケアーをそれだけ ESG のコンサルタントが担えるかで、非財務情報の公開に向けたスピート感も変わってくるのです。

業務コンサルタントは、コストの削減などは得意ですが、売上、利益の確保、そして企業価値、株主価値を維持、向上させる知識は疎いことも往々にしてあります。

更には、各種指標の公開に向けた標準的な開示指標は英語であり、英語ができない限り、ESG のコンサルタントは務まりません。

ESG のコンサルタントは、これらのマルチな領域を、それぞれの専門家と同等か、それ以上の知識を有している必要があり、日本国内では極めて珍しい存在となります。

つまり、専門家チームがよいのではという幻想

ESG の環境、社会、ガバナンスそれぞれの専門家をミックスしたチームで、ESG のコンサルティングを行えば良いと思われがちですが、幻想的な思考であり、実践的ではありません。

専門家は、よくも悪くもクセが強いので、それらをマネジメントできる優秀なプロジェクトマネージャーを必要としますし、それぞれの専門家に助言を求めながら、妥協も求めなければならないことも多く、往々にして専門家は妥協を嫌いますので、チームからの離脱の可能性が高くなります。

チームからの離脱率を下げるには、ESG のそもそもの目的である、長期的な利益配当を株主に対して行っていくという課題は、お金の問題、つまり資本主義社会の根幹であった利益至上主義の一部も含むため、この利益を追求する株式会社の立場をよく理解させていくことがとても重要であり、それがチーム内で常に共有されているアジェンダである必要があります。

しかし、これが難しいのです。

株式会社は、特に ESG を必要とする上場企業は、お金儲けしているんだから、利益を、環境、社会、ガバナンスに費やすことは当たり前だという雰囲気が、それぞれの専門家の中にあります。

ところが、ESG とは でも解説したとおり、環境、社会、ガバナンスを、会社の経営そして事業にビルドインすることが、ESG 実践で必要となるため、利益の免罪符のような CSR 的な考え方は、そもそも ESG を生業にするには不適切な考え方なのです。

この一癖も二癖もある専門家チームをまとめるには、相当ハイレベルなプロジェクトマネージャーである必要があり、こうした専門家自体に加えて、プロジェクトマネージャーが単体でクライアントに対してコンサルティングを提供するのは、殆どの場合キャパオーバーなお話になるのです。

もちろん、各専門家の知見やノウハウ、それらの領域に対する熱量や取り組まれる姿勢は称賛に値するものがあります。

つまり、チーム制にすると費用が高くなる

仮に、環境の専門家の年収を、800~1,200 万円、社会の専門家で二つの領域程度で、600~1,000 万円ずつ、ガバナンスで、950~1,500 万円程度あり、これらをマネジメントするプロジェクトマネージャーが、2,000 万円程度となると足し算だけで、5,000 万近くかかります。

それに対し、コンサルティング会社のフィーを上乗せすれば、年間で、6,000 万円程度、月額 500 万円程度支払うことになります。

チーム制にすると費用が高くなるというのは、このような背景に基づくものなのです。

もちろん、ESG では、ESG 金融の取り込みが大前提ですので、数億、数十億多ければ数百億のお金が動きます。そのため、そのコストとして考えるのであれば、比較的安いと評価はできると思います。

しかし、ESG は結果論として、株式市場がどのように反応するかなので、ESG のプロに任せな限り、株式会社の反応が薄いことも考えられます。

その場合、ESG のプロによる立て直しが再度必要となることがあります。

立て直しのケースと、最初からコンサルティングに入るのでは、前者は、後者よりもコストが増加します。従来の ESG の舵取りの方向性を変えるのは、株主や投資家に対して説明責任がありますので、その分、コストが膨らむと考えていただければと思います。

自社のみで行うケース

では、いっそのこと「自社のみ」で対応する場合、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

メリットは、自社内にノウハウがたまりますので、将来的に強い ESG の体制を構築することができます。

デメリットは、情報が乏しい中、英語の文献などを探りながら、英語の国際標準の開示方法を参照していくので、時間と手間がかかります。

企業経営上の時間と手間とは、すなわちコストですので、本業に影響が及び、更には、十分な成果を得る確証がないままプロジェクトを進めていくことになり、遅々として進まないことも往々にしてあります。

また、株主や投資家に対して情報開示をしても、本気度や特に専門性をみられるため、素人感のある情報開示の場合、投資先としての魅力にかけることがあり、ESG の最大の目的である ESG 金融の取り込みがうまく行かないケースも出てきます。

ESG 金融の取り込みにはある程度のテクニックが必要ですので、そのテクニックがない状態では、なかなか既存株主の理解、投資家への理解を求める上では、厳しいものがあります。

最善策は、1~2 名の ESG のプロによる伴走

最善策は、ESG の本当のプロを 1~2 名程度コンサルティングに入ってもらい、自社にノウハウを蓄積しながら、正しい情報開示に向けて動き出すということです。

ESG の最大の目的である ESG 金融の取り込みが成功し、自社のみでいずれは自立できるように社内研修も含めてコンサルティングしてくれる会社が最も魅力的なパートナーではないでしょうか。

それも最短で行い、コンサルティングのイグジット戦略があるコンサルタント会社(コンサルティング会社としては、自社の売上が減るので本当はやりたくないのですが)が、クライアントである自社にとり最適なパートナーといえます。

いつまでもズルズルとコンサルティング費用を払い続けるのは、やはりコスト面でも大きな負担となりますので、可能な限り初回の契約時に、イグジット戦略があるのかどうかも確認してみてください。

最後に当社のご案内

当社は、ESG のプロ集団であり、伴走型のコンサルティングをご提供しております。それも、50 万円/人月からですので、比較的お安い金額となっており、イグジット戦略として、クライアント企業の経営陣、従業員向けに研修を行い、自社で自立して ESG を推進できる環境をお作りします。

また、イグジット戦略で完全にイグジットされてしまうと、リサーチが大変になるので、イグジットとして、月額 98,000 円でご相談を承ることも行っております。例えば、海外の国際標準の開示手段に改定があり日本語版ができていない場合など、日本語版のご提供を、上記の金額でさせていただいておりますので、安心してお任せいただけるようになっております。

ご興味がございましたら、当社の ESG コンサルティングのサイトをご参照ください。