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ESG とはそもそも何ですか?

ESG とは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治/ガバナンス)を意味しており、それぞれの頭文字を取り、ESG となります。

SDGs のように変わった呼び方はなく、そのままイーエスジーと読みます。

主には、企業の経営、事業のあり方を示す非財務情報のことで、ESG それぞれのデータを自ら開示し、長期的に安定した投資対象となるための手法となります。

一方で、ESG 投資とは、各企業(主には上場企業)が開示した ESG に関する非財務情報を元に、ロングタームで投資をするかどうかを検討し、開示された ESG に関する指標が自らの投資対象である場合に実行される投資方法となります。

まとめると、ESG に配慮した企業経営、事業推進をすることを、ESG 経営、それらの指標をもとに投資をすることを ESG 投資と呼びます。

ESG であるためには

Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治/ガバナンス)を意識して経営するのは、今の時代当たり前だと思われる方も多いかもしれません。

例えば、E の環境であれば、日本政府が、脱炭素 を推進していたり、SDGs の潮流から、気候変動への意識の高まり、脱プラ 推進など、今までストローがプラスチック製だったのが、紙製になったり、レジ袋有料化など身近に感じることができます。

S の社会であれば、ダイバーシティーやインクルージョンという言葉が多く使われるようになり、多様性の享受という時代に突入しています。ダイバーシティーの観点からすると、まだ 2020 東京オリンピック・パラリンピックを開催した日本であれば、パラリンピックは、日本人のみならず、世界の多くの人たちにダイバーシティーの重要性を認識したことだと思います。一方で、性的マイノリティーの享受の観点から、LGBTQ という言葉も使われるようになり、少数の方たちをインクルージョン、つまり受け入れて、社会に取り込んでいく動きが盛んです。

G については、企業統治やガバナンスという言葉は、会社に属していると、これらに関連する研修を受けさせられたり、関連する認証制度などの監査などを受けるという話を聞いたことがあるかもしれません。JSOX 法 というものが、2009 年から始まり、また、個人情報保護法 などで、企業が、経営陣のみならず、従業員全員が法律を守るということが、企業が統治されている状態、ガバナンスされている状態とすると、法律を遵守していることを示す コンプライアンス などビジネスパーソンには身近な状態だと思います。もちろん、各種ハラスメントなども排除しなければなりません。一部の不適切な行動を従業員が、動画投稿サイトに投稿してニュースになることがありますが、これはガバナンスされていない状態であり、悪い事例の一つだと言えます。

ESG 経営であるためには、これらの ESG に関する取り組みを「言葉だけではなく」、「数値化」をしたり、「指標」を示したりして、対外的に公開する必要があります。

この対外的な公開は、決算報告などと合わせて行われることが多く、指標として GRI スタンダード対照表 やその他の非財務情報を開示する手法を用いて、国際基準で定められた方法で行われます。

ESG または ESG 経営は、ESG 投資と密接に関連しているため、主には、個人投資家や機関投資家、証券会社などに向けて発信されるものであり、海外の投資家も当然対象となるため、国際基準である必要があります。国際基準でない場合、比較対象とならないので、投資家の方たちにとって、せっかくの ESG 経営が届かないことになります。

ESG は CSR とは大きく異なります。

CSR が、企業の社会的責任と言われ、事業を通じて得た利益の中から、社会に貢献していくのを目的としているのに対し、ESG は、事業そのものが ESG である必要があります。CSR は、事業の範囲外での対社会的活動であるのに対し、ESG は事業そのもの、そして経営の中心部にある概念です。

まとめると、ESG であるためには、事業に ESG を直接的に直結し、そして経営の中心部に置く必要があり、それらを国際基準である各種指標を用いて、投資家の方たちに公開していくということになります。

ESG は上場企業だけのものなのか

答えだけ最初に述べると、ESG は、上場企業だけのマターではありません。

スタートアップ

スタートアップ企業などでベンチャーキャピタル(VC)などから資金調達をする際にも、投資側は ESG に配慮して投資をする傾向にシフトしてきているため、創業したて、創業間もないスタートアップ企業も ESG に配慮して事業を進める必要性があります。

もし、これから起業を考えているのであれば、いずれかの段階で資金調達する必要が出てきますので、最初から、ESG を意識した事業計画、アイデアの創出をしていくと、後々 ESG の恩恵を受けられる可能性が高まります。

中小企業

上場企業の ESG の範囲は広く、サプライチェーン、バリューチェーンといった上場企業の仕入先からクライアントまで全体を管理することが求められる場面が多いので、中小企業においても、こうしたサプライチェーン、バリューチェーンの中にある場合には、今の段階で求められることは少ないかもしれませんが、将来的に、上場企業の ESG の意向に沿った対応を求められる可能性は極めて高いです。

また、中小企業の多くが、人手不足に悩んでいることがありますが、今後、フレッシュな人材(18 歳から 25 歳くらいの高等教育を終わった人たち)を雇用する場合、このような若い世代は、サスティナビリティやエコなどの関心が高いため、ESG を取り込んで経営していくこと、そしてそれらを株主向けではなく、従業員候補向けに公開していくことは、人材確保の上でも重要な課題だと言えます。

一方で、事業承継や M&A などを検討している中小企業も、買い手側が ESG 経営をしているのであれば、売り手側も ESG 対応していくことで、買収行為がスムーズに行きます。買い手側が事業を承継した後、M&A を実行した後に、既存事業を ESG 化するお金と工数を削減できるため、予め ESG 対応をしておくことで、魅力的な買収先として選定される可能性を高めます。

NGO/NPO などの非営利組織

NGO/NPO などの非営利組織にとっても ESG は重要なテーマだと思います。

ここには2つの視点があり、一つは、企業の ESG を監視する役割、そして、企業だけでは対応しきれない場合に、自らの得意分野を提供することで、活動資金を賄うということです。

非営利でも、営業して収益を得ることは、組織を持続可能な状態にするために必要な活動ですので、ESG で課題を感じている企業に、自社の強みを提供することで、経済全体の好循環を生み出す可能性が高いです。

また、ESG 経営自体、長期的な成長を目的としているので、非営利組織そのものにも ESG のエッセンスを取り込んでいくことで、安定した経営基盤を構築するきっかけともなります。

市区町村や都道府県といった地方自治体

行政とは、そもそも税金の再分配機能を用いて、公共の福祉のために行われるため、ESG の中でも、特に S である Social(社会)に直結しています。また、E である Environment(環境)も当然考慮して、ごみ問題という地域の課題や森林や海を抱える地方自治体では、これらの環境の保全も行政の役割となります。

ESG は金融言葉ですが、こうして考えると、行政そのものは、そもそも ESG の E と S を意識したものであることが明確です。

そして、G の Governance(企業統治/ガバナンス)は、企業統治を行政の統治として、首長である市区町村長や都道府県知事のトップダウンのもと、統率の取れた状態である必要があります。これは、日本政府(国)でも同じことが言えます。

しかし、未だに汚職事件や贈収賄、不正入札などがニュースになることがあり、改めて行政の統治の重要性を認識させられます。

繰り返しますが、行政そのものは完全に ESG であるべきであり、企業の模範である必要が求められています。

一般市民

一般的な市民は、4つの立場になり、ESG と関連してきます。

一つは、消費者として、もう一つは個人投資家として、そして従業員として、最後に国民としてです。国民としては重要ですので、少し分けて解説したいと思います。

消費者として ESG に結びつくためには、E が優先的に出てきます。コンビニやスーパーを中心に小売業では、レジ袋やプラスチック製品のスプーンやフォークなどの辞退ということから、ごみの分別をしっかりと行い、リサイクルが適切に行われるように家庭内の行動も企業の E を後押しします。

そして、最近では、ポイント投資などで、ESG ポートフォリオなどが出始めていますので、ESG に関心を持ち、初心者でも ESG に投資することができます。もちろん、プロであれば、釈迦に説法かもしれませんが、ポートフォリオの見直しで、ロングタームで投資をすることで、ESG 企業を後押しができます。

従業員としてどこかに勤めているのであれば、所属企業の一員として、社会的な責任を負います。大手外食チェエーンを中心に、不適切動画が問題になりましたが、企業も G であるガバナンスを徹底したいのですが、24 時間、365 日従業員を監視するわけにはいかないので、意識を高く一般市民である従業員が、自己の道徳の範囲で、不適切な言動を控える必要があります。

また、従業員一人ひとりが、ESG を意識することで、現場から思いも寄らないアイデアが生まれることもあり、経営陣だけではなく、従業員としても積極的に ESG の意識を持ち、現場で活躍されることを強く望みます。

国民として

ESG なんて金融言葉だし、お金持ちが儲けるためにあるんじゃないのと思われたら大きな間違いです。

ESG が成功することで、国民が受けられる恩恵は多数あります。

20 歳以上の国民が行っている最大の投資とは何でしょうか。

それは年金です。

日本では、年金は賦課方式のため、今月国民が払った年金が、今月国が支払う年金受給者向けの年金としてそのまま横流れしています。

簡単にすると、年金受給者に支払わなければならない年金が仮に 1 億円だとすると、国は、1 億円分国民から年金として徴収します。かなり、自転車操業に近い状態が、今の日本の現状でもあります。

しかし、それでは少子高齢化の日本で年金の支払い額がどんどん増えていくことになるのでそれはまずいということで、今まで積立してきた年金を、将来の年金の支払額の増加の軽減を目的に、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) は、資産運用を通じて積み立てた年金の額を伸ばそうとしています。

GPIF は、国民から預かった資産を 200 兆円近く運用しています。

そして、GPIF は、資産運用に当たり、ESG 投資として、ESG を重んじた投資を行っています。

つまりは、国民も、ESG に関心を持ち、ESG 企業を後押ししていくこと、積極的に ESG 企業の製品・サービスを消費していくことで、ESG 企業の業績を伸ばし、それらが転じて、運用している年金のかさ増しをして、将来の年金の受給額を保ち、そして、現役世代の支払う年金額を抑え込むことに結びつくのです。

このような国民経済の循環を知ると、一般市民としても、ESG とは密接に関わっていることが理解できます。

まとめ

ESG は、上場企業だけのものではなく、実は、上場企業以外の企業や行政、一般市民にも密接に関わっていることがわかりました。

社会が ESG にシフトしていくことで、多くの恩恵を受けることができます。

ぜひ、この記事をお読みになりましたら、ESG への意識を高め、日々の生活をサスティナブルなものにし、日本全体、世界全体での持続可能な社会の実現に取り組んでみませんか。