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ESG と SDGs の違い

ESG と SDGs は、原則的には異なるものです。では、ESG と SDGs の違いを見ていきましょう。最後に共通点を明らかにしたいと思います。

ESG と SDGs の違い 1 ~対象が違う~

ESG は、企業の経営手法であり、事業そのものに ESG を取り入れて経営することを目的としています。

事業そのものが ESG に対応することで、環境や社会、企業統治/ガバナンスといった経営上無視はできない課題を可視化していくことで、株主や投資家、投資機関などの評価を得て、目先の利益の確保だけではなく、長期的で安定した経営を実現することが、ESG の役割です。

ESG についての詳細は、ESG とは、をご参照ください。

一方で SDGs は、国連で採択された全世界的なプロジェクトであり、国連、国連の団体、国家、地方自治体、企業、NGO/NPO、そして一般市民をも巻き込む壮大なチャレンジです。

詳細は、SDGs とは をご参照ください。

つまり、こうして並べてみると、ESG がもっぱら企業を対象にしているのに対し、SDGs は、「誰ひとり取り残さない」という言葉通り、全世界を巻き込んだ動きであることが見て取れます。

まず第一の違いは、対象の範囲となります。

ESG と SDGs の違い 2 ~評価が違う~

ESG を評価するのは、主には、既存株主か株主になりたい個人投資家から機関投資家まで「投資」を中心とした人たちから評価されます。また、格付け機関や NGO/NPO などからも評価されます。

そして、評価をする基準は多種多様で、決まったフォーマットはまだ確定はしていません。標準的なものとしては、GRI スタンダード対照表SASBスタンダード などがあります。

投資を中心とした人たちの評価の視点も、確立したものはなく、主には、経営陣と投資をする側との対話が重要視され、ESG の取り組み具合が本気かどうかを見定めて、ESG に関する評価をし、投資の実行や撤退などを行います。

これはまだ ESG が発展途上にあることを示唆していて、多くの企業が ESG に舵取りをして、長期的な収益度合いなどを考慮して、市場からも学術的にも評価されるものだといえます。その「長期的な」を判断するには、まだまだ時期尚早な状態です。

一定の ESG 経営と収益の度合いを組み合わせた研究結果などが、ESG を実行している企業であったり、学術的な研究をしている研究所などから発表されていますが、相関関係があっても、たまたま相関関係が発生したのか、因果関係は本当にあるのかは、まだ判断しきれていないのです。

一方で、SDGs については、17 のゴールと 169 のターゲットがあり、これらが 2030 年までに達成されるかという点で、世界中から客観的に評価されます。

多くの場合、17 のキャッチーなキャッチコピーに目が行きがちですが、細部の 169 のターゲットまで意識していることは、まだまだ珍しい状態です。

細部を確認せずに、17 のゴールだけで、自ら(法人や団体)は、SDGs に取り組んでいるといっても、何の説得力はありません。

やはり、169 すべてのターゲットが、2030 年までにクリアされることが極めて重要なのであり、細部を知り、その細部に対してケアをしていく必要があります。

日本国内の SDGs を普及しようとしている一般社団法人やそれらが認定している SDGs の資格も、本来の意図とは大きくかけ離れています。

本来、SDGs に資格はいりませんし、スーツにバッジをつけていても SDGs にはほとんど寄与しません。SDGs バッジが出始めた頃は、周知の上では一定の意味があったと思います。

169 のターゲットを意識して行動できれば、まず第一段階はクリアであり、第二段階として、世界中のネットワークを通じて 2030 年までに達成していくロードマップを描くことが、現在 2022 年の最大のテーマまであり、資格を保有したり、資格を認定して受験料や認定料を徴収している暇はもうないのです。

つまり、SDGs とは、資格保有者や一部の SDGs を生業としている人間たちにより評価されるのではなく、広く一般市民でも明確にわかるように国連が最終的な結果を取りまとめて公表することでしか判断ができません。

SDGs は、SDGs そのものがビジネスになると考えた時点で、もう既に SDGs の評価を誤っている証拠であり、国連の定めたゴールに向けて、一刻も早くより多くの人間が関与していかなければなりません。ちなみに、SDGs をビジネスのエッセンスにはできます。

SDGs は、2030 年までにいかに 169 のターゲットがクリアできたかという点であり、国連、国連の団体、国家、地方自治体、企業、NGO/NPO、そして一般市民が、国連が取りまとめた結果を評価するものです。

第二の違いは評価に関するものです。

ESG は、確定した公表基準は一定度あるものの(つまり予め決まっていない)、主には金融業界からの評価や自然や社会などに関する非営利組織などからの評価であり、SDGs は、明確な基準が国連から発表されており(つまり予め決まっている)、評価するのは、2030 年時点の地球上に生息するすべての人間となります。

ESG と SDGs の違い 3 ~関与のレベルが違う~

ESG は、主には、経営陣のコミットが必要であり、経営陣の方針を金融業界との対話を通じて折り合いをつけ、そして、全従業員にまで落とし込み ESG を推進します。

金融業界との折り合いとは、一般的に投資家は、短期の利益を求めます。それが徐々に変わりつつあり、金融業界でパラダイムシフトをし、短期だけではなく、長期的で安定した収益の確立を目指すようになったのです。

しかし、未だに短期の利益を求める投資家も多く、ESG を実行するとコストがかかることが多いので、短期的な利益は減るけれども、長期的には魅力的な投資先であることを対話を通じて企業は投資家に理解を求めなければならないということです。

一方で、SDGs は、国連が採択した背景から、国連や国や地域がコミットしたと表現できます。しかし、それを地球上すべての人間に浸透させられるかというと、極めて難しいです。

主には二つの理由があります。

一つは、情報格差で、SDGs そのものが伝わらないこと、または伝わっても 17 のターゲットのみが伝わり、細部を無視したやっているだけの活動が増えてしまい、結果的に、全地球人を巻き込むまでには、相当パワフルな国連や国家などによる広報活動や非営利組織の関与、個人の関与が必要です。

もう一つは、SDGs に賛同するかしないかは、その人次第ということです。全部に反対する人もいるでしょうし、一部は賛同できるけど、一部は賛同できないと考え、SDGs に否定的な人もいるでしょう。もちろん、いくら国連や国家が関与しているからとはいえ、賛同と行動そのものは、個人の自由であり、個人の自由を超えてまで SDGs を進める必要性はありません。

「個人の自由を超えてまで SDGs を進める必要性はありません」というのは、一種のダイバーシティの享受でもあり、SDGs の理念にも合致しています。

第三の違いとは、関与のレベルです。

ESG は、経営陣がコミットして推進する以上、その企業に属する人間は、同じ方向性を向き、行動することが求められます。乱暴は表現を用いるのであれば、もし方針に従いたくなければ、退社してもらっても構わないというレベルでの関与を求めます。

SDGs は、個人の自由で関与でき、強い強制力はありません。仮に企業が SDGs を推進していても、それに応じない従業員が存在しても多様性を受け入れるダイバーシティの観点から、公平に評価しなければなりません。但し、ESG 上で企業が SDGs のターゲットを用いている場合を除きます。

それ以外のSDGs に関する国が推進する活動、地方自治体(都道府県、市区町村)が推進する活動、その他の推進する活動なども賛同できれば参加し、仲間を増やして、SDGs の推進をより多くの人を巻き込み、活動していくことが求めれます。

また、SDGs には、国レベルでの政策、金融対応、予算配分などが 169 のターゲットに大きい割合で組み込まれているので、市民活動のみならず、SDGs を推進する政治を選択する選挙もよい活動の一つであり、SDGs を推進したい人たちに課せられた使命でもあります。

共通点はサスティナビリティ

ここまで ESG と SDGs の違いを見てきましたが、共通点を最後に明らかにしたいと思います。

それは、サスティナビリティの観点です。

ESG も SDGs も実は同じ原点から始まり、同じ未来を歩む点で一緒のベクトルで動いています。

成長の限界として、環境汚染や資源の枯渇問題が騒がれた 20 世紀後半に、「このまま経済だけを、つまり利益至上主義だけでは地球がだめになってしまう」という観点の政策提言、論文発表などが相次ぎ、持続可能な社会を求める動きが盛んになります。

ESG も SDGs も成長の限界に達しようとしている最中生まれた点では、双子のようなものです。

資本主義社会では、原則として「自由経済」ですから、国連や国家が市場に介入することはあまり望ましいことではありません。そこで、ESG が独自に取り入れられ、持続可能な企業として、末永く市場で生き残っていくことを目指す企業や投資家が、自然的に発生して増えていったというのが、ESG になります。

つまり、経営陣も株主や投資家たちも持続可能な収益の確保を求め、同時に、環境や社会に優しいことが、人間社会が崩壊しないで持続可能なものであることを目指しているのです。まさに、サスティナビリティの観点です。

一方で SDGs は、国連内で議論され、MDGs などを経て、SDGs となりました。これらの背景には、各国の働きかけもあったことでしょうし、設計されている点で、自然的に発生し増えていったというよりは、計画的に綿密に練られた取り組みであるといえます。もちろん、持続可能な開発目標という言葉の通り、サスティナビリティを意識した国連主導の全世界的なプロジェクトです。

双子の ESG と SDGs は、生きる道は違うものの、最終的には、持続可能な社会の実現にフォーカスがあり、持続可能な社会を実現することで、結果的には同じゴールで再会するのです。

ESG と SDGs は、双子であり、サスティナビリティという使命を負った道をそれぞれの領域で発揮し、今後も私たちの暮らす社会が持続可能であることをゴールとしています。