ESG とは

ESG は、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス・企業統治)を意味していており、それぞれの頭文字を取り、ESG となっております。この ESG を意識し、ESG を事業内にビルトインした経営が ESG 経営です。ESG 経営をしている企業に、短期の株の売買ではなく、長期的に株式保有し、ロングタームで配当を得ていくことを目的として投資するのが ESG 投資となります。

ESG 投資とは

ESG 投資とは、長期的に株式を保有することで、利益を得ていく投資、または運用方法になります。ESG を意識した企業は、サスティナビリティ(持続可能性)が高く、長期的に安定して利益の配当を受けられることが想定されるため、安定した資産運用をしたい投資家の投資対象になりやすい傾向にあり、それが欧州を中心に世界に拡大し、日本国内でも急速に意識が高まってきています。

株式の投資というと、短期の売買が目立ちがちです。例えば、A 社の株式を、100 万円で購入し、半年後に 200 万円の価値になったので、売却をすれば、100 万円の利益になります。これは、日本証券取引所などの東証などで、日々売買される株式市場の株価を意識した投資になり、比較的シンプルで、わかりやすいため、短期の売買を目的とする投資家も多くいます。

一方で、年金などを運用する側(アセットオーナー)と運用を委託する機関投資家(アセットマネジメント企業)とすると、数兆円以上の資産を、年金受給者のために投資をするため、短期的にリスクの高い売買を通じて損失を出すことは、避けなければなりません。

もちろん、年金を運用するアセットオーナーだけではなく、その国の国民からしても、年金の投資に失敗して、将来、年金が受給できないということがあってはならないはずであり、年金に限らず、多額の資金を運用する場合には、長期的な視野で投資をします。

その際に、「では、長期的に安定した投資先とは何か」という疑問が、常に投資にはつきまといます。

それを解決しようとしているのが、ESG に関する潮流であり、環境や社会に配慮し、企業のガバナンス(企業統治)がしっかりと行われている企業であれば、長期的に安定したリターンが望めるのではないかということで、ESG 投資が盛んになってきているのです。

ESG と SDGs 違い

ESG が、企業の非財務情報を示すものであるのに対し、SDGs は、国連、国家、企業、市民といった地球上で人類が抱える問題を包括的に対策を取るアクションプランであり、ESG に取り組むことで、企業価値、株主価値を上げることはできますが、SDGs 単体では、企業の株式的な価値を引き上げることはありません。

しかし、企業が SDGs に取り組むことで、ブランドとしての価値を向上させることがあり、これが個人投資家などを中心に評価を受ければ、投資対象となり得る可能性はあります。

また、ESG は、企業の事業の中にビルトイン(埋め込む)ことにより、企業のサスティナビリティに直接的に貢献しますが、原則として、SDGs を企業の事業内にビルトインしてサスティナビリティに取り組むことはなく、企業は、SDGs の理念に沿った経営を心がけることで、地球全体のサスティナビリティに貢献していくものだといえます。この地球全体のサスティナビリティに貢献しているという評価が、間接的に企業のサスティナビリティに貢献することがあります。

双方の利点を活かし、企業は ESG に取り組む上で、国連で採択された SDGs というゴールとターゲットを理解し、SDGs のゴールとターゲットを解決できるような行動を取り入れ、ESG と SDGs 双方を事業と事業外の企業活動に交えていくことで、直接的にも間接的にも企業価値、株主価値を高めていく確率を高めることができます。

ESG も SDGs もベクトルとしては同じ方向を向いているため、ESG の情報開示や行動を公表する際に利用する GRI スタンダード対照表や気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)などに対応していく上で、自然的に SDGs の各種ターゲットに近づき、それらを紐付けして精度を高めていくことも可能です。

ESG にコンサルタントは必要か

ESG に関する多くの企業さまからのお問い合わせにおいて、コンサルタントについてお尋ねいただきますが、結論から申し上げると、自社でも十分に対応が可能だと考えております。

しかし、ESG の情報開示には数多くの工数がかかるため、コンサルタントを交えながら、細かい作業もアウトソースすることも考慮すれば、コンサルタントを採用することには意義があります。

また、ESG が盛んになり始めたのは近年のことであり、ESG に対する決定的な模範解答がない時代ですので、外部のコンサルタントは、業界を横断的に経験しているため、ESG に不可欠なストーリー性やビジョンなどを描く際に、コンサルタントの意見はとても有益です。

ESG は、自社だけではなく、サプライチェーンマネジメント、バリューチェーンマネジメントなど、商流の川上から川下まで管理していくことを考慮すると、コンサルタントのノウハウや知識が、ESG 経営をしていく上では、必要となるケースが多いです。

例えば、自社内に数多くの業種の経験者が多い場合、コンサルタントに頼らずとも、各業種、業態などを理解し、サプライチェーン、バリューチェーンを管理できれば、コンサルタントは不要です。

その際には、自社の従業員との対話が必要であり、また取引先との対話も必然的に生まれ、それらの対話を通じて、サプライチェーン、バリューチェーンを管理していくことが重要になります。もちろん、後述しますが、既存株主との対話も極めて重要です。

なぜ、ESG は対話を重要視するのか

ESG は、短期の利益ではなく、長期的な安定した利益の確保というサスティナビリティを重んじた経営であり、現行の資本主義社会におけるショートタームの、つまり短期的な利益を追求する経営から一歩引いて視点を変え、ロングタームで事業を見直すきっかけでもあります。

その際に、経営陣は、株主から経営を委託されているので、株主を優先し、四半期決算で売上と利益を確保し、高配当を目指すといった従来型の経営ではなく、株主と対話をし、短期的な利益の追求はもちろん重要ではあるが、長期的な安定した利益の追求も必要不可欠であり、そのためには多少、短期的な利益の圧縮を我慢して欲しいと株主と対話をし、理解を得なければなりません。

そして、非財務情報を中心に ESG は評価を受けるので、単なる指標の公開だけで、株主に「一体この会社はどこを目指しているのか」という理解を得るのは難しく、ストーリー性やビジョンなどを「言葉」で補足し、それらを「数値」で立証していくことが、ESG 経営には求められます。

この「言葉」と「数値」が一致して同じ方向性を向いているときにのみ、株主との対話が成立します。

さもなければ、やっているふりというウォッシュとして扱われ、ダイベストメントなどの脅威にさらされることになり、経営陣がコミットして、トップダウンで、「言葉」と「数字」を構築していき、対話の実現をしていくことが求められます。